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ボパール化学工場事故

ボパール化学工場事故とは?

ボパール化学工場事故(ボパールかがくこうじょうじこ)は1984年に発生した世界最悪の化学工場事故である。現在も工場から漏れ出した化学物質による周辺住民への健康被害が続いている。また工場を管理していたユニオンカーバイド社への訴訟や責任問題は未解決である。

事故に至るまでの経緯

1969年、アメリカのユニオンカーバイド社の子会社であるユニオンカーバイド・インディア(Union Carbide India Limited: UCIL)が、自社の『セヴィン』と呼ばれる殺虫成分(カルバリル)を生産するために、インドのマッディヤ・プラデーシュ州の州都ボーパールに生産拠点を置いた。セヴィンを生産する際に使用されるイソシアン酸メチル(MIC)の生産プラントが増設されたのは、後の1979年のことである。

1984年12月2日 - 12月3日にかけての深夜、水がイソシアン酸メチルの入ったタンクの中に流入し、発熱反応が起きた。それによりタンク内の温度は200℃にまで上昇し、一気に圧力が上昇、約40tのイソシアン酸メチル (MIC) が流出し、有毒ガスが工場周辺の町に流れ出した。この有毒ガスは肺を冒す猛毒である。有毒ガスは北西の風に乗り、ボパールの都市へと流れていった。

工場の近隣市街がスラムという人口密集地域であったこと、また事件当夜の大気に逆転層が生じて有毒ガスは拡散せず滞留したため、夜明けまでに2000人以上が死亡、15万から30万人が被害を受けた。その後数箇月で新たに1500人以上が死亡するなど被害は拡大し続け、最終的にはさまざまな要因で1万5000人 - 2万5000人が死亡したとされる。

汚染の現状

政府が主導する意思を持たなかったため、何トンもの毒性廃棄物が手付かずのまま放置されている工場の清浄化は行き詰まった。環境問題研究家たちは、この廃棄物は市の中心部の汚染源となる可能性があり、生じる汚染は何十年にも渡ってゆっくりと広がり、神経系、肝臓、腎臓に障害を与えるおそれがある、と警告している。調査により、事故以来がんなどへの罹患率が高まっていることが示されている。活動家たちはダウ社に汚染物質の除去を求め、インド政府に対し同社からより多くの資金を供与させる命令を出すように要求している。

BBCは2004年11月14日の放送で、事故現場はいまだ数千トンの有毒物質 — 容器が開けっ放しのまま放置され、あるいは地面に流れ出したヘキサクロロベンゼンや水銀などで汚染されているという調査結果を報じた。いくつかの区域は汚染があまりにも激しく、10分以上とどまると意識を失うおそれがあった。降雨によってそれらの流出が起こり、付近一帯の井戸を汚染した。BBCに代わりイギリスから派遣された水質分析者によるボーリング試験によって、汚染濃度はインドの基準値の最大500倍であることが明らかにされた。付近の居住者と、同程度の経済状態の他の地域とを比較する統計調査が行われ、工場近辺ではさまざまな疾患の度合いが高いことを明らかにする結果が報じられた。

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