産業廃棄物
産業廃棄物とは?
産業廃棄物(さんぎょうはいきぶつ)とは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、次に掲げる廃棄物をいう(同法第2条第4項)。「産廃」(さんぱい)と略される。
1.事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
2.輸入された廃棄物(船舶及び航空機の航行に伴い生ずる廃棄物(政令で定めるものに限る。廃棄物処理法第15条の4の5第1項において「航行廃棄物」という。)並びに本邦に入国する者が携帯する廃棄物(政令で定めるものに限る。同項において「携帯廃棄物」という。)を除く。)
産業廃棄物の概要
産業廃棄物のうち、原油などの爆発性、廃酸、廃アルカリなどの毒性、感染性など人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるものを特別管理産業廃棄物(略して”とっかん”)といい、さらに、廃ポリ塩化ビフェニル、ポリ塩化ビフェニル汚染物、廃石綿、ばい塵などは特定有害産業廃棄物と言う。
家庭等から排出される一般のごみ(一般廃棄物)は市町村に処理責任があるのに対し、産業廃棄物は排出事業者に処理責任(下記参照)がある。法的に取り扱いが異なるため、廃棄にあたっては、市町村等の一般廃棄物用の処理施設での処理・処分することはできない。産業廃棄物を処理・処分できる許可を受けた産業廃棄物処理事業者へ処理・処分委託することとなっている。
焼却処理する方式として、乾溜ガス化炉等がある。
なお、産業廃棄物に該当しない事業活動に伴う廃棄物(事業系一般廃棄物)については、事業者が自ら処理するか、市町村または市町村の許可を受けた一般廃棄物処理業者に処理・処分を委託しなければならない。一般廃棄物処分業の許可を受けていない産業廃棄物処理事業者へ処理・委託することは違法となる。
あらゆる事業活動に伴うもの
燃え殻(例として、灰かす、石炭ガラ、コークス灰)
汚泥(例として、ケミカルスラッジ(製紙スラッジ、めっき汚泥)、下水道汚泥、ベントナイト汚泥、浄水場沈殿汚泥)
廃油(例として、潤滑油系廃油、切削油系廃油、洗浄油廃油、絶縁油系廃油)
廃酸(例として、廃硫酸、廃塩酸)
廃アルカリ(例として、石炭廃液、アンモニア廃液、写真現像廃液、か性ソーダ廃液)
廃プラスチック類(例として、廃発泡スチロール、廃合成繊維、廃写真フィルム、廃ポリ容器)
ゴムくず(例として、天然ゴムの切断・裁断くず)
金属くず(例として、古鉄、スクラップ、ブリキ・トタンくず、鉛管くず)
ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず(例として、板ガラスくず、破損ガラス、廃あきびん類、陶器くず、耐火煉瓦くず、コンクリート二次製品、石膏ボード)
鉱さい(例として、高炉等からの残さ、不良鉱石)
がれき類(例として、工作物の新築、改築又は、除去に伴って生じたコンクリート破片・レンガ破片)
ばいじん(例として、電気集じん機捕集ダスト、バグフィルター捕集ダスト)
特定の事業活動に伴うもの
パルプ、紙又は紙加工品の製造業・新聞業・出版業・印刷物加工業等から生ずる紙くず
建設業から生ずる紙くず(工作物の新築、改築または除去に伴って生ずるものに限る)
建設業から生ずる木くず(工作物の新築、改築または除去に伴って生ずるものに限る)
木材・木製品製造業等から生ずる木くず
繊維工業(衣類等の繊維製品製造業を除く)から生ずる繊維くず
建設業から生ずる繊維くず(工作物の新築、改築又は除去に伴って生ずるものに限る)
食料品製造業・医薬品製造業・香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物
と畜場においてとさつし、又は解体した獣畜及び食鳥処理場において処理した食鳥に係る固形状の不要物(動物系固形不要物)
畜産農業から生ずる動物のふん尿
畜産農業から生ずる動物の死体
以上の産業廃棄物を処理するために処分したもので、上記の産業廃棄物に該当しないもの
事業活動に伴う廃棄物であっても、これらの定義に該当しないものは産業廃棄物ではなく、一般廃棄物となる。 例えば、「紙くず」は業種の限定があり、これに含まれない一般のオフィスから排出されるものは産業廃棄物ではない。
また「従業員がオフィスで捨てた飲料用ペットボトル」などは「廃プラスチック」であるが、事業活動によるものでないとして産廃扱いしない例も多い。
こうしたもののうち不要物について、最高裁判所(平成11年3月10日判決)は、「自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物」と定義した上で、「これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状况、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決する」としている。その上で、豆腐製造業者が排出するところのおからは、不要物にあたり、産業廃棄物にあたるとしている。
産業廃棄物処理業
産業廃棄物収集運搬業
特別管理産業廃棄物収集運搬業
産業廃棄物処分業
特別管理産業廃棄物処分業
不法投棄問題
産業廃棄物の排出量と比較して、同一県内にある産業廃棄物の処分場が慢性的に不足。
処理技術の向上による処理費用の増加。
トラック輸送の低価格化による燃料費削減を目的とする不正軽油の利用により、その密造に伴う有害廃棄物の発生。
このような背景の中、法令等に定められた処理・処分をせず、不法投棄・不適正保管をする排出事業者や処理・処分業者が後を絶たない。その件数は、量の少ない物を含め、1年に1000件を越えるといわれる。不法投棄地では、水質汚濁や土壌汚染などの環境汚染が起こっている。
有名な不法投棄として、「香川県豊島の不法投棄事案(豊島事件)」、「青森県・岩手県の県境産廃不法投棄事案」、「埼玉県朝霞市上内間木新河岸川河川敷PCBドラム缶不法投棄事案」[5][6]などがある。
産業廃棄物の不法投棄の対策を促進するため、2003年度から10年間の時限法である産廃特措法(特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法)が制定された。