景観破壊
景観破壊とは?
景観破壊(けいかんはかい)について述べる。これは、芸術品・公共物・私有財産を含む、美しいものや尊ぶべきものを、破壊もしくは汚染する行為、ヴァンダリズムと深く関連している。
景観に対する観念は人によって大きく異なり、高層ビルが立ち並ぶ摩天楼が美しいという人もいれば雑然とした商店街が好きという人もいるが、特に海外に旅行・留学した人はかなりの割合で日本の景観の悪さを再認識するという。篠原一男はこうした日本の光景をカオスの景と呼び、後にプログレッシブ・アナーキーとして再定義される。内藤廣は講演ではいくじなしの風景と呼ぶ。原広司は著書で、外国人にみせたくない、と記している。
農村ののどかな風景がよい、という人もいれば、高層ビルの並ぶ都会的な街並みがよい、という人もいるであろう。現在の日本では、景観の意味構造がかなり崩壊している現状に、価値体系も拡散する現代社会にいて特定の形態システムに安定した説話を新たに付与するのはほぼ不可能で、公準的な役割を景観が果たすのはもはやむずかしいというスタンスがみえる。清潔で整然とした町並みがよいと思える人もあれば、雑然とした無秩序な町並みが好ましいと思える人もいるだろう。同じ街並みを眺めても、ある人は「人のぬくもりが感じられて懐かしい」と思い、別の人は「古臭くて活気がない」と感じるかもしれない。
景観破壊とされる例
建築
狭隘な土地にペンシルビル・ミニ戸建が立ち並び、しかも高さが揃わないことによって見た目の印象がよくない。
建物の意匠や色彩が近隣の風景や伝統的風致との調和を考えていないこと。
風土的由来を感じさせない建築の意匠が多くなり、外装に人工素材を多用するようになったため、無機質な工業製品のような印象を与えていること。
ハウスメーカー - 町並みからローカル色は消えうせ、どこも同じような景観になってしまうという弊害が良く指摘される。
外構 - 手入れのない放置状態は都市景観を損ねるために、住民同士のコミュニティを悪化させる可能性も
布団 - 現代では景観に関する条例などから布団を干すことができないところも
広告
ファーストフード、ドラッグストア店舗の増幅, 地方都市ではスプロール化が進み、バイパス道路沿いに大型チェーン店・ショッピングモールが林立して郊外の農村風景を破壊している。
日本の駅前地域は派手なネオン・原色の看板などで無個性化、乱雑な雰囲気である。
捨て看板、電柱広告、野立て看板 - 目立たせるのが目的であるためどうしても影響が
巨大な広告看板も道端に乱立, 中高層ビルが密集住宅街に隣接して建設され、巨大な壁と化していること。
サラ金ビル、消費者金融#都市の景観に関する問題
ラッピング広告 - 東京都営バスでは、当初は脇見運転の誘発や景観破壊の懸念などの意見もあった。
幟 - 設置される広告用の幟には、通行妨害もほか、景観を損ねるといった批判も。
交通
スカイライン (道路) - 現在では道路の存在が景観を乱していることも。
ゴムタイヤトラム - 架線が必要なため、沿線の景観を損ねる。
チャリドリ - 自転車によるドリフト走行によって路面にタイヤ痕が残り、路面の景観を損ねる事にも。
ガードレールや防音壁が周囲の風景と調和しないことが多い。近年は風景に調和しやすい茶色の信号機やガードレールも導入されているが、歩道橋は立体物として風景全体を阻害するものであり、歩道幅を確保する意図で近年は撤去されるものもある。
その他
電線・電柱が、大都市部の商業地区などを除きほとんど無電柱化されておらず、風景を邪魔しているほか、企業や商品の看板が氾濫していること。電柱などに捨て看板を巻きつけたり、ビラを貼り付けたりする行為も多い。
過度な美化工事。温かみを持たせよう意図するデザイン、花の絵をペイントでコンクリートに描くこと
テトラポッド・コンクリート護岸が自然の海岸風景を失わせ、街中の川はコンクリートで護岸され、柵がめぐらされて水辺空間が失われたこと。海岸のテトラポッドやコンクリート護岸が浜辺を埋めてしまうことによって自然の海岸風景が毀損されるだけではなく、水辺の生態系も破壊している
建設発生土 - 土砂不足から過剰な掘削による採掘山の景観破壊も
ストリートアート - 街を汚損する傾向が強いタギングが嫌われる一方、都市景観に華やかさを加えるストリートアートを評価する向きも
缶ポイ捨てによって町の景観が損なわれることも
シャッター通り、割れ窓理論
高圧電線が山や森を貫き、道路や線路 (鉄道)が山を切り開いて建設されている。山では送信鉄塔によって山全体の見栄えが悪くなっている。
史跡・重要文化財などピンポイントでは保護を行うが、街全体の歴史的景観を保護しようという概念がない
圃場整備 - 棚田などの良好な景観が破壊される
雪崩の障壁 - 作ると景観には悪い。何列も作らねばならないような場所では特に影響が
自然の生存権 - 地形や景観に生存権を認めるという考え方が出ている
景観破壊をこれ以上悪化させないための政策
土地の細分化を規制
置き看板・捨て看板・ビラの貼り付けの規制、取り締まり。
建物の色・デザインや高さを地域的に統一化。
不必要な立体工作物の撤去。
塀の高さを規制、生垣の奨励
景観に配慮した信号や標識の採用。
外国への見聞を広める。
地下空間の積極的活用。
車道幅を狭め、街路樹を導入する。
不必要な護岸の撤去、景観や生態系に配慮した護岸の採用。
暗渠を親水公園化し、水辺緑地を創出する。
コンクリートの土留めや護岸を植物で覆う
共通言語をもてないことが問題とされる。
電線の地中化、道路や線路の地下化 - 景観が重視される地区で実施されることが多くある
花いっぱい運動 - 花を植えることで町の景観を良くする目的で作られた運動
景観の日制定 日本の景観を良くする国民運動推進会議が中心となって普及啓発
景観条例 - 良好な都市景観を形成することを目的としている。
トンネル - 景観は損ねないとされる
ガードレール - 国土交通省道路局、「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン」の策定がなされている。
屋上緑化 - 花壇や大きく成長することのない潅木植物などで景観にメリハリをつけるなどの配慮も。
自動販売機 - 景観に配慮した自動販売機も見られる。
携帯灰皿 - 2000年代より景観に配慮してポイ捨て回避の観点から普及
公園のダンボールハウスの撤去
外国からの来訪者に美しい都市像を体験させるための施策実施, 醜いものを排除するという名目で、国家的イベントの実施, 廃墟の観光地化、相対的視点を提示し議論を深める
企業広告の記念撮影スポット化させ、都市の現状にある不の要素から、積極的な意味を見出す
デザインガイドラインの作成。アドバイスできうる見識者の積極的登用。
プロデュース制度、マスターアーキテクト制度の確立と誘導
廃墟の観光地化、相対的視点を提示し議論を深める
市民参加および法的調整で美しい都市をつくる手法の模索。
高層ビルによって周辺の空地を増やし、太陽や緑の空間を取り戻していく, 高さ制限を設定することにより、高層ビルの建設を規制する
ロードプライシングや車両乗り入れ禁止により市街地への自動車乗り入れを制限する。
テクノスケープの積極的評価。都市美運動の復活と普及。
機能的で美しい造形をもつ構築物の創作。
コニファー - 輸入住宅の増加などで変化してきた庭や街の景観によく似合うため、次第に普及。
ラッピング車両 - 京都の中心街を走行する路線バス各社は、京都の印象や景観にそぐわないラッピング車両の多くが短期間で契約解除へと。
ポイントハウス - 住宅団地において景観にアクセントをつけるために配置される。
照葉樹林 - 海岸防風林・防砂林では、再極相化の圧力が景観を損ねるものとしてこれを人為的に阻害しようとする努力も。
水力発電 - 発電所の規模が大きなものとなっても豊かな自然景観を損ねることがないなど利点も。
文化的景観 - 日本の文化財保護法は文化的景観のうち特に重要なものを重要文化的景観として選定することができるとしている。